RSウィルス母子免疫ワクチンについて
- 2025年3月31日
- 診療情報
RSウィルス感染症とは?
RSウィルスは世界中に広く分布するウィルスで、生後2歳までにほぼ100%がRSウィルスに感染します。乳幼児における肺炎や気管支炎の50%以上がRSウィルスによるとされています。症状は咳、鼻水、発熱、喘鳴、呼吸困難などで、乳幼児では鼻水、鼻づまりを認めます。潜伏期間は4-6日で、主に飛沫や接触感染でも伝播します。特に、新生児や6ヶ月未満の乳児では重症化し無呼吸や急性脳症を起こすなど命に関わる場合があります。とくに、低出生体重児や早産で生れた赤ちゃん、心臓に病気がある赤ちゃんでは重症化のリスクがあるため、RSウィルスの流行時にはRSウィルスの抗体を投与します。しかし、RSウイルス感染による乳児の入院は、基礎疾患のない正期産児の頻度が高く、また月齢別の入院発生数は、生後1~2か月時点でピークとなるため、生後早期から予防策が必要とされています。日本では毎年約12万から14万人の2歳未満の乳幼児がRSウィルス感染症と診断され、その約4分の1に当たる3万人のお子さんが入院が必要と推定されています。有効な治療法がないため、予防の重要性が注目されています。
RSウィルスの予防法は?
こんな恐ろしいウィルスなのに有効な治療法もないので、予防がいかに大切かおわかり頂けたと思います。RSウィルスの予防法には大きく3つあります。
① 感染対策
RSウィルスの主な感染経路は接触感染であるため、感染している患者さんの唾液、鼻水などにRSウィルスがたくさん含まれます。手指を清潔にし、唾液や鼻水などの接触に特に注意が必要です。
② ハイリスクな乳幼児への抗体投与
RSウィルス感染症のリスクの高い乳幼児にRSウィルスに対する抗体を投与します。早産で生れた新生児、乳児、生まれつき心臓に病気を持っている2歳以下の幼児などが対象です。RSウィルスの感染の流行前に投与しますが、最近ではその流行予測がとても難しくなっています。以前は流行の開始が夏だったのに対し、2023年以降は春から流行が始まるようになっています。日本には先に述べた、感染リスクのあるお子さんにのみ抗体の投与が保険適応で行われますが、米国などの先進国では健康な子どもを含めた全ての子どもに対し、抗体投与が行われています。
③ 妊婦さんへのRSウィルスワクチン接種
2024年5月から、RSウィルス母子免疫ワクチン(アブリスボ)が妊婦さんに投与できるようになりました。ワクチンは筋肉注射で行います。ワクチン接種によりお母さんの抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに届きます。この抗体が赤ちゃんに届くのに2週間程かかります。接種時期としては妊娠28週から32週での投与をお勧めしています。インフルエンザやコロナなどの他のワクチンとの同時接種が可能です。
お母さんから赤ちゃんへのプレゼント
妊娠後半になると胎動もつよくなり、赤ちゃんの誕生を心待ちにする思いが日に日に強くなってきます。楽しみな反面、不安な気持ちも当然ながら出てくるものです。我が子の健やかな成長を望む気持ちは親としては当然の思いですよね。妊娠中のワクチン接種はお母さんから赤ちゃんへのプレゼントです。生れて間もない赤ちゃんをRSウィルス感染症から守るために、RSウィルス母子免疫ワクチンをご検討頂けたらとおもいます。