
NIPTとは
NIPTとは
妊娠9~10週頃に、妊婦さんから10ml程の血液を採取して行います。実は、お母さんの血液の中には、お腹の中の赤ちゃんの「DNAのかけら」がながれています。これをcf-DNA(セルフリーディーエヌエーと読みます)といいます。妊婦さんの血液中にある胎児のcf-DNAの約10%は胎盤に由来します。胎盤は受精卵からできていますので、原則として赤ちゃんと同じDNAをもっています。これを次世代シークエンサーという機械を使って、胎児の染色体について分析を行います。別名、非侵襲的出生前遺伝学的検査とか、新型出生前検査とも呼ばれている検査です。当院は日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会の認定を受け、東京慈恵会医科大学附属病院を基幹施設とした連携施設としてNIPTを行います。
対象となる疾患は、ダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの3つのみです。性別については判定しません。未認可施設では、この3つ以外の染色体や性染色体の異常、さらには染色体の微小な変化が関わる病気も調べている施設もあります。しかし、これら3つの染色体以外の検査の精度については十分に検証されていません。
性染色体異常で起こる疾患には、ターナー症候群やクラインフェルター症候群があります。これらの検査の検査精度は3つの染色体トリソミーに比べて低く、ターナー症候群では、妊婦さんの年齢が高くなると、検査精度が下がることが知られています。
また、3つの染色体トリソミー以外の常染色体の数の異常がある受精卵はほとんどが着床まで至らずに流産してしまいます。そのため、陽性的中率が低い検査となり、NIPTで陽性とでた場合でも、そこから確定検査である羊水検査まで進んだとしても、その疾患が確認される可能性は相当に低いと推定されます。
結果は、陽性、陰性、判定保留のいずれかで出されます。
結果がでるまでに1週間程度かかります。
病気がある可能性が高い、という判定です。確定診断である、羊水検査等が必要になります。実際には病気がないのに陽性とでる「偽陽性」もありますが、NIPTは偽陽性が少ない検査です。ただし、その正確さは妊婦さんの年齢によって変わり、年齢が若くなる程低くなる傾向にあります。例えば44歳の方が検査を受けてダウン症が陽性という判定であった場合、99%くらいの確率で本当にダウン症があります。一方、25歳くらいの方が、13トリソミーが陽性という判定であった場合、本当に13トリソミーがある可能性は20%を下回ります。このように、陽性的中率は、母体年齢がいくつか、またどのトリソミーなのかで変わってきます。これは、これらのトリソミーの頻度は母体年齢に関係していること、また各トリソミーの発生頻度にそもそも違いがあるためです。ちなみに、日本で2013年にNIPTが開始され2021年までの8年間で行われた約10万件の調査では、陽性率は3つのトリソミーの合計で1.8%(50人に1人)でした。そのうちダウン症が最も多く、次いで18トリソミーでした。ダウン症が陽性という結果がでた方の陽性的中率は97.3%で、偽陽性率は2.7%でした。
病気がない可能性が高い、という判定です。ダウン症、18,13トリソミーのいずれにおいても、陰性的中率は99.99%以上あります。陰性の結果が出た場合、それを確定するために羊水検査などは行いません。2013年から2021年までに行われた日本でのNIPTの陰性率は97.8%でした。ただし、「偽陰性」といって、本当は病気があるのに、NIPTで陰性と出てしまうことが、0.01%(1万人に1人)の確率でおきます。また、陰性という結果であっても、赤ちゃんに体のつくりの異常などを含む他の病気を認めた症例が4%程ありました。赤ちゃんが生れる前に全ての病気を見つけることは不可能ですが、超音波スクリーニング検査などを併用することで、胎児の体のつくりの異常をみつけ、適切な新生児医療へつなげることもできます。
判定保留とは、陰性とも陽性とも判断ができないという判定で、0.4%程度の確率で起きると報告されています。お母さんの体重が大きい場合、巨大な子宮筋腫合併妊娠の場合、またヘパリンなどのお薬を使用している妊婦さんでは、結果が判定保留となることがあります。判定保留となった場合は、遺伝カウンセリングを行い、「もう一度NIPTを行う」、「NIPTを行わない」、「羊水検査を行う」などの選択肢があります。
妊娠9~10週以降であれば、希望される全ての方が受けることができます。以前は年齢制限などがありましたが、今はなくなっています。検査を受ける前にはかならず遺伝カウンセリングが必要になります。遺伝カウンセリングを受けた後に、やっぱり検査は受けない、という選択肢もあります。また、妊娠9~10週以降であっても、赤ちゃんのcf-DNA量が少なすぎる場合には結果が判定保留となることもあります。これには、先にも述べましたが、お母さんの体重やヘパリンなどのお薬が影響していることがあります。また、偶発的に妊婦さん自身の染色体異常や悪性腫瘍などが発見されることもあります。
NIPTを受ける方すべてに「陽性」という結果が返ってくる可能性があります。検査を受ける前には必ず遺伝カウンセリングをおこないますが、事前にご自身とパートナーの方と陽性という判定が出た場合はどうするかについて話し合って頂くのが理想的です。診断を確定するためには羊水検査が必要になりますが、そこではっきりと診断が確定した場合にどうするか。簡単には決められないかもしれませんが、これを機会にご夫婦やパートナーの方と、赤ちゃんを迎えることについてじっくりと考えて頂きたいと思います。その際には、当院の出生前検査事前学習の動画や、出生前検査認証制度等運営委員会のWEBサイトをご参考にしていただき、遺伝カウンセリングや診察の時にお気軽にお尋ね頂ければと思います。