その症状筋腫のせいかもしれません 後編
- 2024年12月18日
- 診療情報
子宮筋腫の診断は?
内診や経腟超音波検査、必要によりMRI検査などの所見を併せて診断します。画像所見が典型的な子宮筋腫とは違う場合や、閉経後に急激に増大する場合には、先ほども述べました子宮由来の悪性腫瘍の一つである子宮肉腫を疑うこともあります。
治療方法は?
治療方法は大きく分けて2つあります。一つ目は手術療法、二つ目はお薬による治療です。
1.手術療法
まずは手術療法についてご説明します。手術には、子宮を残して子宮筋腫だけを摘出する「子宮筋腫核出術」と、子宮ごと全て摘出する根治的な「子宮全摘出術」があります。閉経が近い40代後半くらいの方では、根治術である子宮全摘出術が選択されることが多いです。子宮と一緒に卵巣を摘出される場合もありますが、その場合には術後に更年期症状を認める場合もあります。完全に閉経した方では、子宮と一緒に両方の卵巣を摘出しますが、まだ40代前半など閉経するには早い年齢の方では、両側の卵巣を残す場合もあります。その場合、子宮は摘出されていますので月経はなくなりますが、卵巣は残されているので女性ホルモンの分泌は維持され、すぐに更年期症状がでるということはありません。ただ、卵巣を残すので、将来卵巣腫瘍を生じる可能性は残ります。年齢に応じ、手術を担当される医師と相談して手術方法を決めていきます。
一方、今後妊娠・分娩を希望される30-40代くらいまでの方では、子宮筋腫だけを摘出する、子宮筋腫核出術を行います。筋層内筋腫は子宮筋層内に筋腫が埋まった状態にありますが、その埋まっている筋腫だけをくるっと外しとる核出術を行います。筋腫の部分だけを取り出し、摘出後の創部をきれいに縫い合わせて子宮を元の形に整えることができます。漿膜下筋腫では、子宮筋腫が子宮の外側にむけて飛び出すようにできているため、その根元の部分で切除することで筋腫を摘出します。最近は腹腔鏡を用いることで手術の傷を小さく、体への負担を軽くした手術方法が主流となりつつあります。そのため入院期間も以前よりも短くなっています。また、子宮粘膜下筋腫は、子宮の中側にに向けて発生しているため、お腹側から手術をするのではなく、腟の方から子宮鏡という装置を子宮内に挿入し、子宮内へ突出している筋腫の部分を削りとる手術を行います。
子宮筋腫はできた場所や、手術時の年齢やライフスタイルによって手術方法が変わるという特徴があります。
2.薬物療法
薬物療法にも大きく分けて2つの方法があります。一つは筋腫による症状に対して行われる対症療法と、筋腫自体の治療を行うものです。
子宮筋腫があることによって、月経痛や過多月経が起きている場合、ピルなどのお薬を内服して月経を調節することにより筋腫によるつらい症状を緩和させる治療法です。鎮痛薬や漢方薬を用いたり、貧血がある場合には鉄剤を内服するのも対症療法です。また、低容量ピルや黄体ホルモン製剤を内服することにより、月経痛の改善や月経量を少なくすることをめざすこともあります。
一方、筋腫自体を治療する方法には、注射剤や点鼻剤、内服薬の投与があります。最近、「レルミナ」という新しい内服薬が使える様になりました。1日1回決まった時間に内服するだけで、筋腫を小さくすることができます。だたし、このお薬は体を閉経の状態に変化させてしまうため、ほてりや頭痛、急に汗をかいてしまう等の更年期に似た症状が出てしまうことがあります。また、このお薬を内服することで骨密度が低下することがあります。そのため、レルミナを連続して内服できるのは6ヶ月間が最大となっています。内服を中止すると骨密度は回復していきますが、同時に筋腫も徐々にまた大きくなって行きます。そのため閉経が近い年齢の方や子宮筋腫の手術を控えた術前に用いられることが多いです。
最後に
子宮筋腫は女性の20-30%に見られるよくある疾患の一つです。子宮筋腫自体は良性のものですが、女性ホルモンにより徐々に大きくなるため、30-40代の年齢の女性に様々なトラブルを起こしたり、妊娠の妨げになることもがあります。年1回の子宮がん検診の際には、経腟エコーを追加して、子宮や卵巣のチェックをすることはとても重要です。また、なかなか妊娠しない、性交時痛がある、月経時に血の塊がでるなどの症状がある方は、一度婦人科を受診されることをお勧めします。何事も早期発見が大切です。気になる症状がある方はお気軽にご相談頂きたいと思います。