その症状、子宮筋腫のせいかもしれません 前編
- 2024年11月13日
- 診療情報
子宮筋腫とは
子宮は平滑筋という筋肉から成る臓器で、妊娠時には胎児を育ててくれる大切な器官ですが、妊娠が成立しなかった場合には、女性ホルモンの作用で子宮の平滑筋が収縮し毎月子宮内にたまった古い血液を排出する月経が起きます。この子宮の平滑筋にできる良性の腫瘍が子宮筋腫です。子宮筋腫はそのできた場所によって名前がつけられます。子宮筋層の中にできたものは「筋層内筋腫」、子宮の外側にできたものは「漿膜下筋腫」、月経などが起きる子宮の内側にできたものは「粘膜下筋腫」と呼ばれます。子宮筋腫の大きさも様々で、1cmに満たない小さなものから、10cmを超える巨大なものまであります。数も1個だけの場合から、複数個できる場合もあります。比較的若い方から閉経後の方まで高頻度に見られ、30歳以上の女性の20-30%の方に認めると言われています。女性ホルモンである「エストロゲン」の作用により徐々にサイズが大きくなる良性の腫瘍です。しかし、大きな筋腫の中には稀に「子宮肉腫」という悪性の腫瘍が紛れていることがあります。ですので、「筋腫が急におおきくなった」と感じられた時には、お早めに医療機関を受診されることをお勧めします。
子宮筋腫の症状とは?
子宮筋腫の主な症状としては過多月経、過長月経、月経痛、貧血などがあります。症状のない方もおられますが、筋腫が大きくなると、周囲の臓器を圧迫し、頻尿、排尿困難、便秘、腰痛などの症状を認めることもあり、中には腹部に固い塊を触れる、といって来院される方もおられます。また、粘膜下筋腫では、筋腫自体の大きさは小さくても、過多月経の原因となっている場合もあり血液検査をしてみるとひどい貧血が見つかった、という場合もあります。
妊娠と子宮筋腫について
妊娠を考えておられる方では、粘膜下筋腫などが受精卵の着床の邪魔をして、なかなか妊娠しにくい、妊娠しても流産しやすくなるなど不妊の原因となる場合があります。また妊娠中には女性ホルモンの影響で筋腫が急に大きくなったり、筋腫への血流が悪くなるなどして筋腫が壊死を起こして激痛を起こすこともあります。また、分娩時に出血が多くなったり、筋腫のある場所によっては帝王切開が必要になる場合もあります。その場合には手術時に出血が多くなることが予想されるため、あらかじめ出血に備え、ご自身の血液を何回かにわけて貯めておく「自己血貯血」というのを行うことがあります。それにより、輸血を回避できる場合もありますが、貯血できる回数や量にも限りがあるため、必要な場合には輸血が必要になることもあります。妊娠前に子宮筋腫の手術をされたことがある方は、帝王切開による分娩となる可能性もあります。これは、子宮筋腫の手術で一度子宮にメスが入った場合では、もし経腟分娩をした場合「子宮破裂」を起こすリスクがあるためです。帝王切開が必要かどうかは、子宮筋腫の手術をされた先生に確認する必要があるため、将来出産を考えている方は術後に担当医に確認をしておきましょう。
子宮筋腫の診断は?
内診や経腟超音波検査、必要によりMRI検査などの所見を併せて診断します。画像所見が典型的な子宮筋腫とは違う場合や、閉経後に急激に増大する場合には、先ほども述べました子宮由来の悪性腫瘍の一つである子宮肉腫を疑うこともあります。