葉酸について
- 2024年3月4日
- 診療情報
妊娠したら葉酸サプリをとらなければいけない、ということをご存じの方は多いと思います。今回は、妊娠と葉酸について説明したいと思います。
そもそもなぜ葉酸が必要?
葉酸は赤ちゃんの背骨が正常に形成されるのに必要なビタミンの一種で、妊娠前から妊娠12週まで摂取することが勧められています。赤ちゃんの背骨といいましたが、正確には医学用語で「神経管」という、背中の神経や骨、それらを包む膜などに成長していく体の部位のことです。この神経管は胎児期のごく初期、皆さんがまだ妊娠に気づいていない時期では、かまぼこの板のように平らになっていますが、妊娠6週頃にはトイレットペーパーの芯のように筒状になり閉じていきます。この際の神経管の閉鎖が不十分だと、脊髄髄膜瘤などの脊椎や背骨の先天的な異常を起こします。葉酸にはこの神経管閉鎖障害のリスクを減らす効果があることがわかっています。
どのくらいの葉酸の量が必要?
1日400μg、つまり0.4mgの葉酸の摂取が必要です。お手持ちのサプリに含まれる葉酸の量を確認してみましょう。米国では0.4~0.8mgの葉酸摂取が推奨されています。赤ちゃんの神経管の閉鎖は妊娠6週で完成するため、妊娠する1ヶ月以上前から葉酸の摂取を行うことが大切です。食品中の葉酸は熱により活性が失われてしまうので、食事に加え1日0.4mgの葉酸サプリの摂取が勧められています。高用量といわれる1日1.0mg以上の葉酸摂取は、ビタミンB12欠乏による貧血の症状をマスクしてしまう可能性があり注意が必要です。また1日5mg以上を妊娠全期間にわたり長期に内服した場合、児の運動神経発達遅延のリスクが高まるなどの報告もあります。サプリとしては0.4~0.8mgの葉酸の摂取を心がけましょう。
食材 | 枝豆 | 春菊 | ほうれん草 | 菜の花 | アスパラ | イチゴ | レバー | ウニ |
400μgの葉酸 目安 |
130g | 210g | 200g | 120g | 210g | 450g | 40g | 110g |
およその量の 目安 |
1袋 | 1袋 | 2/3袋 | 1/2袋 | 10本 | 30個 |
いつからいつまで内服する?
先ほども述べましたが、少なくとも妊娠1ヶ月前から妊娠12週になるまでの期間の摂取が必要です。1日0.4~0.8mgの葉酸であれば、妊娠12週を過ぎて妊娠後期まで内服を継続しても問題はありません。
葉酸摂取で注意する必要がある方
過去に神経管閉鎖障害の赤ちゃんをご妊娠されたことがある方は、次のお子さんで神経管閉鎖不全を起こすリスクが通常より10倍以上高くなるため、1日4mgを妊娠12週まで内服することが勧められています。その場合でも、妊娠12週以降は0.4mgの葉酸量に減量するなどの調節が必要です。抗てんかん薬を内服中の方、潰瘍性大腸炎の治療薬を内服中の方は、お薬が葉酸の活性と拮抗してしまうため、食事からだけでなく、サプリメントで0.4~0.6mgの葉酸を妊娠前から摂取することが推奨されています。
まとめ
・1日に0.4~0.8mgの葉酸を摂取する
・妊娠1ヶ月前から妊娠12週までの期間は摂取する(上記量であれば妊娠12週以降も摂取可)
・葉酸の過剰摂取に気をつける
これから妊娠をご計画の方は葉酸の内服を開始してみましょう。妊娠された方でまだ葉酸を摂取していない方は、妊娠に気がついた時からでもいいので葉酸サプリを開始しましょう。適切な量を適切な期間摂取することで、お腹の赤ちゃんの発育を応援できます。葉酸について何かお聞きになりたいことがあればクリニックでお気軽にご相談ください。