月経のお悩み(月経困難症、PMS、月経不順、過多月経)
月経のお悩み(月経困難症、PMS、月経不順、過多月経)
月経痛(生理痛)の原因となる子宮内膜症や骨盤内炎症は悪化すると不妊の原因にもなってしまいます。子宮筋腫や子宮腺筋症も知らずに放っておくと、気づいたときには重度の貧血になっていたり、手術をしなければならない大きさになっていることもあります。
また月経困難症によって学業や仕事がはかどらないなど、さまざまなところに影響が出てしまいます。
月経痛は通常、月経量の増える2〜3日目の時期に強く感じますが、月経の始まる直前に痛みを感じる人もいます。
※婦人科を受診するのに早すぎる年齢というのはありません。初経が始まり、月経痛がつらい場合は早めに受診することで月経痛へ対処することができ、月経へのマイナスイメージを持たずに上手に付き合っていくことができます。「月経がつらい」という方は早めに受診してみてください。
月経に伴って起こる下腹部痛などの症状により、日常生活に支障を来たし治療を要する状態の時、月経困難症と判断します。生理がある人のおよそ3人に1人に見られます。何らかの疾患があることで起こる器質性月経困難症と、原因となる疾患がない機能性月経困難症に分けられます。器質性月経困難症は、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症、子宮の形の異常などの病気が原因となります。機能性月経困難症は、月経時の血液を子宮から排出する際に、頸管(子宮の出口)が狭いことによって生じたり、プロスタグランジンという物質によって子宮が強く収縮しすぎてしまうことが主な原因です。多くの月経困難症がこれに該当します。初潮後2~3年で始まることが多いとされています。症状で最も多いものは月経時の痛みで、腹痛や腰痛のほか、肛門周囲に痛みを感じることもあります。若い方の場合には、年齢とともに、また妊娠出産によって症状が軽快することがあります。治療は、プロスタグランジンが作られるのを妨げる、ロキソニンなどのNSAIDsという非ステロイド抗炎症薬を使用したり、ピルの内服も有効です。保険で使用できる薬としては、フリウェル、ヤーズフレックスやジェミーナ等があります。当帰芍薬散などの漢方薬も有効とされていますが、効果を感じるのに数か月を要することもあります。
月経前になると眠かったり、イライラしたり、不安になったり、吐き気がしたりおなかが痛かったり…そんなことはありませんか?
PMS(月経前症候群)は、月経前3~10日間に現れる身体的、精神的な多種多様な症状で、月経の発来とともに消失または減弱するもの、と定義されています。日常生活にまで身体的・精神的な支障をきたします。PMSが原因で学校や仕事のパフォーマンスが落ちることが明らかになってきていて、人生をより快適に過ごすためにPMSの治療は大切なことだと思います。生活習慣の改善や運動も有効だといわれていますし、今は低用量ピルなど辛い症状を緩和するよいお薬もあります。
精神的にお悩みの方は婦人科、心療内科で迷われるかもしれません。まずはどちらでも受診してみる第一歩が大切です。必要な場合はご紹介もできますのでまずはご相談にいらしてください。
月経不順だけど忙しいし…と放置してきた方、月経不順なのか不正出血なのかわからないという方。月経不順の原因を知ることで思わぬ病気やがんが見つかったり、赤ちゃんが欲しい方には適切な治療法もありますのでお気軽にご相談ください。
月経周期というのは、月経の始まった日から次の月経の開始日前日までの日数を指します。正常な範囲は25日~38日で、月経周期が24日以内を頻発月経、39日以上を希発月経、90日以上停止した場合を続発性無月経といいます。希発月経や頻発月経の中には無排卵の方が一定数いるともいわれています。
急な体重の増減、精神的ストレス、激しい運動による負荷、抗がん剤等の薬剤の影響、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮の手術による影響などがあげられます。その他、甲状腺や脳の異常でも月経異常が起きることがあり、その原因はさまざまです。
原因によって治療法は異なります。まずは妊娠の有無を確認します。経腟超音波検査で子宮や卵巣の状態を見て原因を調べます。PCOSでは特徴的な卵巣の所見が見られます。また、血液検査を行い、生理に関わるいくつかのホルモンや、甲状腺の機能などを調べます。薬が原因の場合は薬を中止してみることもあれば、ストレス等が原因の場合はできるだけストレスが緩和できるよう心掛けながら、経過を見ることもあります。長期に月経が来ていない場合はホルモン剤を使って月経を起こしたり漢方薬を用いて体質改善を試みる場合もあります。
また妊娠を希望する場合は排卵を促すような薬やその他適切な治療法がありますので、お気軽にご相談ください。
「生理の量」は人と比べることはあまりないので自分で多い、少ないがわからないことも多いと思います。以下の項目にチェックが入った方は気軽にご相談ください。知らない間に貧血になっていて、治療をしたらずいぶん体が楽になった、勉強や部活、仕事の効率が上がったという方もいらっしゃいますよ。
一般的に月経血の量は20~140ml、平均50~60mlとされており、過多月経の定義としては、150mlかそれを超えて月経血が異常に多いことをいいます。実際に測るのは難しいため下記の症状がある場合に月経量が多いと判断しています。特に生理の時にレバー状の塊が混じっている方は過多月経が考えられます。過多月経の場合、貧血になることがあるので月経になるとめまい・動悸・疲れやすいなどの症状が出る人も過多月経が疑われます。
子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなどがあります。子宮体がんや子宮頸がんが原因のこともあります。黄体機能不全や無排卵性周期症などで破綻出血を起こし、結果として過多月経になる場合があります。10代から20代の若い方や閉経近くの40代後半の方では、この内分泌的な異常が原因のこともあります。このほかには、内科的疾患として過多月経が起こることがあります。血液が固まりにくい病態があり、それが原因で結果として過多月経となっていることもあります。過多月経の精査をしているうちに血液疾患が診断されたという場合もあります。
貧血がある場合には、鉄剤などの内服や点滴を行います。ピルの内服や、子宮内に3㎝程度の小さな器具であるミレーナを入れることもあります。ミレーナについて詳しく知りたい方は、ミレーナの項をご参照ください。このほかにも、止血を促すお薬の内服や、手術による治療もあります。
子宮内避妊具の一種で、レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)とも呼ばれます。世界中でも多くの女性が使用しています。しばらく妊娠を希望しない、次の出産まで時間をあけたいといった経産婦さんには特にお勧めの方法です。避妊率は高く、装着後初年度の妊娠率は0.1%、装着後5年間で0.5%と報告されています。ミレーナは避妊目的だけでなく、過多月経や月経困難症と診断された方では治療として保険適応で使用することができます。
子宮内にミレーナを装着することで、子宮内膜という受精卵が着床する部位を薄くし、子宮頸管粘液を変化させて精子の侵入を妨げることで避妊効果を発揮します。ピルの様に毎日内服する手間がなく、飲み忘れの心配もありません。ミレーナは子宮の中にのみホルモンが作用するので、40歳以上の方、肥満や高血圧の方、喫煙者の方や授乳中の方であっても安全にご使用いただけます。またある研究では、子宮内膜がんの発生リスクを減少させることが報告されています。
ミレーナを装着したすぐ後では、だらだらと少量の出血が続いたり、出血が長引くことがあります。徐々に出血量は減少し、数か月で落ち着いてきます。徐々に月経が来なくなり、装着後1年で約20%の方は無月経となります。無月経でも体内のホルモン分泌は保たれており、排卵は起きますので、100%妊娠しない訳ではありません。つわりのような症状がある時には受診してください。ご出産経験のない方や、子宮筋腫のある方、先天的な子宮形態異常のある方などでは、ミレーナが挿入できないことがあります。装着時に子宮に穴が開く子宮穿孔や、子宮外に出て来てしまう脱落を生じることがあります。5年間そのまま装着でき、5年を超えない時期での抜去が推奨されていますが、ミレーナ抜去時に疼痛と出血を伴うことがあります。抜去が困難な場合には、子宮鏡検査や全身麻酔下での抜去が必要なことがあります。クラミジアなどの性感染症がある方では骨盤内炎症性疾患のリスクが高まるので装着は禁忌です。仮にミレーナ装着中に妊娠してしまった場合には、子宮外妊娠が起きやすいといわれています。強い腹痛や出血などがある場合には必ず受診が必要です。
月経がはじまってから7日以内に装着します。性感染症の疑いがある方は、検査・治療後に装着します。ミレーナは外来の内診台の上で、超音波検査を併用して装着します。麻酔は使用しません。スムーズに装着できる方では数分程度で処置は終わります。装着後は、子宮穿孔や脱落の有無を確認するため、1か月後、3か月後、6か月後、1年後に定期受診する必要があります。以後は1年ごとに定期診察を行います。子宮筋腫等で装着が難しい方、出産経験がなく子宮口が閉じている方や痛みに弱い方などではミレーナが装着できないことがあります。妊娠をご希望される場合には抜去が必要になります。